その日は、私の天使「U子ちゃん」と半期に一回の『客先同士を笠に着た、仕事サボりデート』をしていた。昼からカフェでパフェ。夕方映画、夜もカフェ。健全でピュアなデート。
22時に店から追い出されて帰る道すがら覗いたスマホには、F君からのメッセージ。
ここ数日の、私からの気持ちのすり合わせ行為の精神疲労、仕事への肉体疲労の様子がにじみ出た短めの返信には、
”可愛すぎる”可哀そうさがあふれていて。
思わず電話をかけて声を聴きたくなった。
ものの2秒で、優しく心地の良い声で「どうしましたかぁ?」との返答が。
すこし重たい声に「寝てた?」と問うと、
「いやいや!寝てないですよぉ~。今ちょうど帰りで駅です。・・ミュウさんも外ですか?」
「そう。今日はとっても可愛いU子ちゃんとデートして、今、改札でバイバイしたところ。」「F君は今帰りか!頑張ったね~ごはんは食べた?」
「もぉ~ごはん全然ですよ~、ちょうお腹空いてますもん・・・」「ミュウさん、なんかテンション高いですね。お酒飲まれたんですか?」
「いや。ピュアな関係だからカフェしか行かないよ」
「・・・いま、どちらに居るんですか?」
『近くに居るなら、一緒にごはん食べたい』と彼の心の声が聞こえたが、私は丸の内周辺で、彼は渋谷区。近くに居るはずがなかった。
少し寂しそうなF君の声に、私が「メッセージの内容、プレッシャー与えちゃったかな?って心配になって電話したんだよ」と言うと
「プレッシャーぁ?まぁ、ちょこっとぉ?感じましたけど…」「僕、ほんとうにペイペイだなぁ。だめだなぁって思って」「でも、早く台頭になりたいって思ってるんですよ?」
F君の「ちょこっと」は『かなり』の意味。
何人も鬱でつぶれた人を見てきた経験上、危うさを感じなくはない。
「今度会った時、言おうと思ってる事あるんで。それまでミュウさんも頑張ってくださいね」との閉め。
私は「F君は十分やってるから。無理せずにね。」「おやすみ」で閉めた。
ものの5分ほど聞いた優しい彼の声、疲れを乗せたとろけるような響き。録音しておけばよかった。抑揚たっぷりで喋りかけてくる甘えん坊。本当に可愛い。
彼の生活が穏やかで潤沢な幸せに満ちて欲しいと願うばかり。
ほんの少し、結婚相談所の件を後悔。