結婚相談所で結婚した女

平均の倍稼いでそこそこ見栄えのいいアラフォー。前半は8歳下彼氏、以降は結婚相談所と旦那Sさんとの結婚生活

広告マンの苦悩

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F君の現職は見習い広告マン。

プロモーションメディア系の広告部門に配属され、担当イベント時は土日祝日、泊まり込みの業務も少なくないとの事。

「それ自体は楽しみなんですけど…」言いよどむF君に、我が家の家訓「若い時は買ってでも苦労せよ」と言付けるが。

 

「ハロウィンはショウウィンドウ設営とかで泊まり込みなんですって…」と、いじけながらこちらをうかがう。

「クリスマスも一人で過すんですよ?」「年末年始とかだって…」

私の顔を覗き込みながら言う。けど「いいんじゃない?仕事内容は絶対楽しいと思うよ?」と返す。スッキリしない顔がこっちを見ている。

 

 

私の恋愛遍歴では、こういった催事を恋人と過ごしたことがほぼ無い。海外赴任者や経営者相手が多かったから。

F君の感覚なら、多分、それぞれの催事にそれらしい場所でそれらしいセレモニーを行いたいのだろう。いつも「イルミネーションとか見に行きたいんですけど、カップルが多くて行けないんです。」と言っていたから。

 

けど、そうは業務が許さない。F君は見習いなのだから。

「でもー、やっぱりクリスマスは一緒に居たいです」「…早く、偉くなりたい!」と何かを誓うF君。

 

まぁ、無理でしょう。

君より先に私が偉くなって、私が会えなくなるかもしれないけどね。

と、思った事は内緒。

次のデートの、キャンセル理由は、

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一度目は「あそーだ、ミュウさん。・・・」から始まった、ピクニックが旅行に置き換わった事。

二度目は「美容室に行きたくって!」で、ピクニック時間が劇的短縮されたこと。

三度目はすぐに来た。ピクニックの時に感じた違和感は的中。

「デートの日、親に会えないかって言われて・・・」

 

そもそも、前週末に設定していた日程が休日出社で移動。

F君の「この日にしましょう!」で決めた”その日”は、彼の田舎から上京する父母とのミーティングであえなくリスケとなった。

 

F君には兄がおり、兄夫婦の元に生まれた初孫を見に上京するそうで、コロナ禍でやっと孫初対面。 その際、ご両親は転職したばかりの末っ子をそこに呼びつけた。 たまたま、私との、デートの日に・・・

 

F君は嘘が下手だし、そういう不誠実さを持ち合わせないのは上司だった私が良く知っている。だから、本当に家族の集まりで、申し訳なさを感じているのがわかった。

旅行は気兼ねなく行くくせに、両親とは一年半ぶりの再会。 旅行を挟んできたときよりも大げさに謝るF君。

いや、旅行の方をこのくらい謝りなさいよ。両親に会う事は謝る必要ないでしょうよ。とのツッコミはやんわりした表現に置き換えて・・・

 

憧れだけで広告会社に転職した末っ子は、家族全員の心配の種なんだろう。我が家もそう。末っ子は何歳になっても心配になるものだから。

 

「やっと家族で集まれてうれしいね。めいっぱい甘えてきなよ」と、言付け。2回も。自分に言い聞かせている。

キャンセルされるなら、もう連絡とりたくない気持ちも、なくはない。悲しくなるのが怖いから。 不要な心配と分かっていても、彼の気持ちが遠のいてる?と考えるのも好きになれない。

 

嫉妬する必要のないリスケを忘れたくて、初めて24時間の返信ボイコット。

その期間、F君のメッセージを何度も検証する。

見返すと、いつも通り彼は穏やかで、いつも通り私への愛を込めて送っている。

 

ピクニックでの事を思い出す。彼の心細すぎる給料から、公園の入園料を払い、コーヒー代払い…私に一円も払わせず帰したではないか。

 

確かに私のニーズをカバーしてくれない部分はある。でも、そこに悪意はない。無理をしない関係を保ってくれているだけ。

それどころか、今まで通り約束を守ろうと努力の真っ最中。

なのに、私はどれだけ不安なのか。信じてあげられないのか。彼が可哀そうになってくる。

 

もう少し物理的にも近くに居てくれたら…

一方的な不破解消

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ピクニックデートの一件で私の気持ちが凍え距離を置きたい自分が居たけど、連絡一つ遅れただけで動揺する自分に「F君が嫌いになったわけではないのだ」と、自分の気持ちに気づく。ちょっと時間かかりすぎ。

 

大好きで期待しすぎるから、少し思った通りにならなかった”だけ”で嫌われ、ないがしろにされたような気分になり、悲しくなる。 悲しいのが痛いから、痛みの要因を遠ざけようと拒否してしまっているだけ。

 

私の心の機微にめんどくさいと思っただろう。上司で付き合っていた頃より素で当たっているし。 でも、そのやり取りに付き合ってくれること自体が最大の愛なのである。

「旅行に行かなければいいのに」「たった2時間しか時間をくれなかった」こう考えていた自分がF君よりもかなり子供じみた思考。

これ、20代前半で気づいてたら、今頃カナダで暮らしてたのになぁーとか。昔の恋人を思い出したり・・・

 

たった2時間のピクニックデートと甘く見て、”まぁそれなりな恰好”と手作りビスケットだけ下げて行った私。

対して、大きなレジャーシート、二人分のコーヒー、おろしたての靴、身支度を整え、きちんとセットした髪で来たF君。 手には、ちりめん山椒とガーゼマスクのお土産付きで。

「こんなに沢山!しかも私が絶対喜ぶやつ!(ちりめん山椒)」と言うと、嬉しそうに「当然ですよ」と笑顔で返す。

14時に集まり、16時解散のはずが「この後の美容室、5時半とかに来ても大丈夫って言われたので、もう少し居ましょう」と言ってくれる。

 

ただただ居たたまれない気持ちの私は、すべてがうわの空で、16時ごろに振り出した小雨を理由に時間通りの解散を促した。

 

改札前でまごつく私に気づいてか、「ハグですね」と、相変わらず抱かれ心地の悪い細い体でハグをしてくれる。

「一週間以内にまた会いたいですね。」とニヤニヤしながら言うF君。

・・・ん?次の焼肉デートの日は2週間後だぞ?

 

早速、次回の予定が延期になりそうな予感に包まれながらも、年下の丁寧すぎる愛情表現に”無力で小さな私”が安心できる場所に居られるような、今までにない自分になれた。

小さなズレと、懐疑的な私-2

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楽しみにしていた予定に自分の予定を被せて、きっかけを作ってきたのは向こう。

だから、悪いのは向こうだ。と強く思って怒っていた私。

「すみません~💦」のメッセージに「もっと悪びれた方が許し甲斐があるのに」と毒を盛ったメッセージで返した。

 

F君の「すみません」は時に感情がこもってない時があるとか、代替えの日程はすぐに出ないのかとかから、悪びれていないように感じて思った。

そう思ったのは確かだが、伝える必要があったかと考えると…伝えることはベストではなかったと思う。 ただ、その時はそれを伝えずには居られなかった。悔しかったから。

 

過去、真心の薄い人と付き合っていた時、何度も仕事でスケジュールをキャンセルされ、その度にもがいて苦しんだ、自分の内に居る、”無力で小さな私”がよみがえって辛かった。

F君もあの彼と同じなの?私とピクニックに行きたくなくなったからそんな事言うんじゃないよね?それを一番確認したかっただけなのに。 それが言えれば随分可愛いのに。

 

何を送っても何も気にせず返信が来るだろうと、甘く見積もって送ったメッセージ。

朝、返事を確認すると帰ってきてなくて‥

 

たったそれだけの事。でも、その時の私にとっては、別れを告げられたように感じた。

やっぱり、去っていくのは向こうからじゃないかと。

 

その後、一晩遅れで帰ってきた返事には、私が打診した「行きたい焼肉屋リスト」からの彼の選定先と、「日曜までには帰るので。そこでピクニックしましょう。」「ピクニックは約束ですから」の文章が。

 

それでもまだ気持ちが晴れない私は「寂しすぎて拗ねている」と送ると「なんでそんなにミュウさんは可愛いこと言うんですか?」と。

この時はよくわからなかった”可愛さ”。それは、素直に自分の愛情を伝えること。

忘れないようにしなくてはいけない。

小さなズレと、懐疑的な私

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この時のことを思い出すと、今は自分の精神的な幼さと懐疑的過ぎた部分に可笑しくなるし、彼が私の反応にひどく動揺していたことを思い出す。

本当に、仕事場で長くお互いに知っていたから乗り越えられた、初めてF君と「もうだめかも・・」と思った時の話。

 

9月の季節のいい祝日の近く、いつも通りのメッセージに青天の霹靂が。

「あそーだミュウさん。祝日の次の日、有給が取れて旅行しようかなって思ってるんですけど、いいですか?」と来た。

これは、旅行へのお誘いではない。

F君恒例の一人旅行に行ってもいいか?という打診なのだ。

 

・・・。

全世界の”ちいさな不運”が一気に自分にのしかかったような疲れと、ガッカリがこみあげてきた。

先週、メンバーが安易に起こした他部署への不手際をきっかけに部内で衝突し、かなりの傷心状態だった私。 その時に「いっぱいお話聞いてあげますからね」「僕にたくさん甘えてください!」と言って最大の愛を注いでくれたF君。

それなのに…あいつ、週末にリセットしやがったな。

青い芝生でゴロゴロしたいって言ったのに!!!

 

F君が公園デートに行きたいのは確実で、私をエスコートしようとしてくれているのも事実。 ただ、彼の優先順位の中で「今しかできない事」と「自分の時間の確保」が私を勝ったのだと察することができた。

なぜなら、4年間、かれの上司だったから。

毎年この時期、半期末の業務報告書類もほどほどにエスケープトリップを楽しんで私に文句を言われるのが恒例だった。

 

彼の中での、自分の優先順位が「低い」と感じた愛の喪失感と、裏切られたことへのショックで力が入らない。

少しでも自分の予期せぬことがあると、なぜか別れたくなる。この気持ちの浮き沈みのコントロールができないからだ。

 

いつもなら3日くらい放置する返信を「彼の旅行予約に支障がでては」と冷静にいつものリズムで返信。 何度も打ち直した、最大限の皮肉と、代替え日程と、焼き肉おごりをたかりつつ。

 

その時は、こうやってフラれるのかなぁー、自分が価値観(優先順位)のちがいに引いてフェードアウトするのか…そんな未来が見えたりもした。

 

今考えると、全然たいしたことではない。

親友とも月に一度ほどしか会わないF君が、私には毎週会おうと努力してくれている。少しくらい彼自身に彼の時間を譲ったっていいじゃない。 4年間募らせたF君の愛情はこれくらいでは揺るがない。

年下くんに、ワクチンと引換えのキス

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初めての「夕飯会」デートは、お酒も楽しみ8時ころには早々に片付け。我が家自慢の川沿いの夜景を見に散策へ出かけた。

 

お酒も抜けない、軽い足取り。運よく晴れた天気、秋の虫のさざめき、波の音、ビル群の夜景と、時折立ち止まって写真を嬉しそうに撮るF君。

川沿いに植えられた植物、川沿いのカフェ、釣りをしているおじさん。

どうでもいい話をしながら、私の後を付いてくる彼を確認しながら海の入り口までたどり着く。川の上を走り抜ける風は肌寒いくらい。

Tシャツ1枚で出てきたF君に何度か寒くないか?聞くと「大丈夫です」の返事。

 

ビルの一つ一つを指さして話をして、ちょっと飽きたので折り返して帰宅。

振り返ると後ろに居たF君が腕を広げて笑顔で立っている。

「ミュウさん。ハグです。」

私はこれが、嫌いではないけど得意ではない。体の細いF君のハグは”抱かれ心地”があまり良くなく、ただ距離の近さに緊張ばかりで気持ちが落ち着かないから。

 

ずっとこうしたかったんですよ。と言うF君を引っ張りながら帰路へ向かうのは辞めない。立ち止まって顔を見ながらなんて、恥ずかしくてできない。

私の脇に指先を突っ込む状態で腕に縋りつくF君。それをぐいぐい引きずりながら歩く私。

それまでの数日、部下ではない本質の彼自身と向き合い感じた愛しさ、私へ向けてくれる愛情それが嬉しくて”人間に戻れた”ような気がした。そんな話をすると、彼は目を潤ませながら「当然です」と言ってくれる。

 

歩き疲れて、広く開けたベンチに腰掛けると、私の首元の匂いを思い切り吸い込みながら「僕、ワクチン打ちました」「だからキスですね」と言う。

 最初のデートで彼を帰すために私が出した条件「ワクチン打ったらキスしてあげる」を守ってきたとの主張だった。

 

F君のちいさな顎にはヒゲの感触。「F君もヒゲ生えるんだね」というと「僕も男ですからね!」と、妙に得意げ。

軽く歯が当たる程度のキスを一度だけすると「もっと欲しいです。」とねだりながら私の耳を食べまくるF君。だんだん恥ずかしさと可笑しさがこみあげて、また引きずりながら帰ることにした。

 

 こいつは私の首や耳周りの匂いが大好きで、私がどこに居ても匂いで判るらしい。 私から見たら… まだF君は、犬の方が近いかもしれない。

年下くんの、ナスの揚げびたしの腕前

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嬉しさを隠さないF君にマルシェバッグを持たせ、15時から私のお気に入りの青果店やスーパーへ買い出しに歩く。 

 「冬瓜ってどうやって料理するんですか?」「鱧って太刀魚みたいな感じ?」「タコって高いですね・・」

普段自分が手に取らない食材を買う私に興味津々で、そんなに要らないと言う私をよそにお酒も買い込む。家に梅酒があるのに。 

 スーパーのレジを通り、満開の笑顔で荷づめをするF君は「なんかぁ・・・幸せすぎます・・・」ほぼ私の存在はそっちのけで、妄想の世界にいるご様子。 

 

 その日の献立は、友人から送られた高級そうめんがメイン。サブメインは梅酒。 タコのから揚げ、鱧の湯引き、オクラとナスの揚げびたし、冷しトマトを作ることに。

 

キッチンにF君専用スペースをつくり、手始めに渡したナスとオクラは手際よく上手に切っていく。「ミュウさん!見て~♪」綺麗に切ったナスの筋切りを褒めてくれと言わんばかりに見せてくるので、期待通りのすごーい!で答えた。

 男兄弟しかいない家で育ったと思えない家事能力に、お母様のしつけの良さが垣間見える。

 麺つゆの割る分量を間違えて大変な事になりそうな所をフォローした程度で、油を出せば「僕が揚げます」、使い終わった調理道具は「僕が洗いますから!」でほとんどF君が作ってくれた。

 冷蔵庫から調味料を取り出す私の背中をつつき「ビール・・・飲みながらでもいいですか?」とお伺いを立ててくる。いいよと言いながら渡すと「はぁ。幸せ。」の一言。

 

 出来上がった料理を食卓に広げ、大きくベランダを開放すると晩夏を味わうのに十分な風が通り抜ける。 料理の出来栄えと、そうめん、梅酒の味を堪能しながら食べた夕飯は今年で一番美味しかったと思う。

 

 細い体に入りきらないほどほおばって喜ぶF君は、8割食べてごちそう様に。手早く片付けて19時過ぎには我が家自慢の川沿いへ散歩へ出かけることにした。