休祝日の電話番出勤時は、事務の女性陣をふくめ、女性だけで集まって食事をする。
そんな時の話題は決まって、誰かの悪口やウワサ話。社内の人間の話をいいことも悪い事も、呼吸をするような気軽さで行う。
20代の女の子がいると決まって始まるのが「社内で誰が好みか」の話題。
「やっぱり、K部長がキレイ目で定番のイケメン。かっこいいよね」「Tさんのファンじゃなかったっけ?」などと話題が飛び交う中、
「けど、Fさんのスーツ姿、とくにお尻回りなんて綺麗でカッコよかったですよね!」
こう言い放つのは、20代前半でもあけすけな性格で正直な物言いをするY子ちゃん。
「そうだねぇ。F君スーツ似合ってたもんね。社内のイケメン枠が減っちゃったよね」と、事務の年長組が続ける。
「私服もおしゃれだったし。うんうん。思い出しても良かったなぁ。」
「新しい職場でもモテてるのかな?」
「広告業界だと、F君でも埋もれちゃうような素敵な人ばっかりなのかもねぇ」
と、みんなの妄想が膨らんでいて。
私は「広告だと、客先も綺麗な女性も男性も多いでしょうしね」と、当たり障りない所を参加し、話題を切り替えた。
そう。「スーツが似合う」の話題の中心にいるのは、我が最愛のF君。
彼が今の職場では私服通勤であること、40代に囲まれOJTのお姉さんにだけモテていること、キャラ立ちのいい上司で彼の陰に隠れてしまっていることなど、知っているが言えない。
彼のスーツ姿も、私服も、パンツ一枚の姿も私が独占している。
そこはかとない優越感を抱きながら、普段の顔でみんなと歩く。
もし、いつか社内に彼との関係を話さなくてはいけないとき、男性陣より女性陣に気を使うのかなぁと、しみじみ思う。
退社して数か月たっても、まだみんなの話題にでる彼は、本当に可愛がられて目立った存在だったと思う。 多くの愛しみを受けながら、心豊かに今日も元気に居てね。